栄養から考えるフレイルと介護予防

フレイルは、年齢を重ねるたびに心身の機能が低下していく現象です。本来は「虚弱」を意味する言葉でしたが、現在では社会性・精神面・身体面の3要素の低下を表す言葉になりました。フレイルは自覚症状が少なく、ある日突然気づくのが特徴です。若い場合でも運動不足になると、息切れしやすくなるなどの現象が見られます。高齢者は若者より、3要素の低下が著しく、放置すると要介護状態になります。

栄養士がフレイル予防を意識すると、食べ物を工夫することになります。しかし、まず最初に行うべきは高齢者のオーラルフレイル予防です。オーラルフレイルとは、噛めない、むせる、滑舌が悪くなるなどの食べ物を喉に通す以前の機能低下を意味します。オーラルフレイルを予防するには、運動機能を向上させるしかありません。高齢者に適度な運動を促し、顎の運動なども行います。口を開けたり閉めたりするだけの運動でも、多少の効果を発揮すると言われています。

栄養士は食物に関するプロですので、食べ物を工夫してフレイルを予防しようと考えがちです。当然、食べ物を工夫して健康を維持するのは大切です。しかし、食べ物を飲み込む力がない高齢者は、食事自体が億劫になります。食べるのが楽しいと感じるようになれば、自然と栄養を意識するでしょう。高齢者のフレイル予防を考える場合、栄養士が考えるべきなのは栄養面だけでなく運動や食事環境の工夫でもあります。高齢者が楽しんで食事を行えるよう工夫するのが、栄養士の最大の仕事とも言えます。